チョコ違い提出までの静かなるケンカ
2021.8.24
火曜日。
N「報告あったよー、不具合のやつー」
O「ん?」
なんとなく、わざと笑い袋がいる前で報告書を連想させる言葉を言い出した気がする。
前触れなくぶっ込んできたからOも反応が遅れている。
あれだけ言ったのにまだ『チョコ違い』の報告書を出して来ないらしい。
「また忘れてる事にしててもこっちは忘れてねぇぞ」というニュアンスを含んでいるのだろう。
自分の不始末なんだから自発的に動いて欲しいという苛立ち。
ほんと笑い袋の上司じゃなくて良かった。
笑い袋の方は、あわよくば周りが忘れてくれる事を待つ癖がある。
成功した事もあるんだろう。あるな。
ギリギリに家を出て走って間に合うもんだから余裕を持って家を出れないわたしの様に、成功体験が忘れられない。
この前の話。
口頭での不具合報告から3ヶ月経った辺りで笑い袋が自ら「あたし(報告書を)3ヶ月温めてます笑」とコソッとわたしに漏らしてきて、
その後Nが「報告書どうした?」と追求すると笑い袋は「忙しくて(忘れてました)」と返していた事があった。
確信犯。
わたしの様に。
わたしはそもそも起きる時間すらギリギリの逆算で寝る時間もそうだからいい加減直さなければいけない。とは思っている。
大人が全力で走ってる所あんまり見ないぞ。
わたしの事はともかく、笑い袋は対策をさっさと決めといた方が良い。
お客さんだってそれを望んでいる。
次回の注文では当たり前に対策が為されていると信じている。
笑い袋は惜しいミスよりも初めから適当にやってるミスの方が多い。
それはもはやミスでは無い。運に任せている。
成功体験があるからそれで行けるという自分ルールが出来ている。
Nが笑い袋の反応を試したせいか、今度は笑い袋の反撃が来た。
Nが「材料倉庫の箱になんか材料入れた?」と聞き回っていると、
笑い袋が「あたしじゃないです。Nさんかと思いました」
そう言うと笑い袋はどこかへ。
N「ふふふ笑 やっぱり"あたし"なんだ」
O「『思いました!』」
N「ひどっ」
Nと笑い袋は一言多く言える関係性では無い。
冗談も言い合わない。じゃれ合わない。
だから最後の『Nさんかと思いました』という一言は笑い袋の些細な反撃なのだとNOは受け取った。
意識過ぎでは?と思わなくもないが、
(わたしに言われたか無いだろうけど)
確かに、笑い袋の返しを聞いた時「最後の一言なんだ?」と不思議には感じた。
2人は一言多く言う関係性ではないから。
含みがあるように聞こえた。
どうでも良いんだけどどうでも良くない。
このちょっとした新たな面を切り捨てて生態系に異常でも出たら大変。
Nと笑い袋、
なんだか親と子の様なやり取りだなと感じた。
宿題やらずにゲームに夢中になってる子が親に注意されて「あとで宿題する気だったし!」とキレる。
「あー!やろうと思ってたのにもうやる気無くした!」となるか、
また言われる前にとっととやっちゃおう!となるかは知らないけど。
笑い袋の家の話を聞いてると親の言う事に対して負けたくないみたいな負けず嫌いな一面が垣間見える。
そんなのスルーしとけば良いじゃんと思う様な他愛無い話題も「あたしは知らないって言ってんのになんであたしに聞くかな!?」と思い出し怒りしていた。
職場ではそんな面は出さないが、
Nに対してその負けず嫌いの面を出している様に思える。
事務所から戻ると、
N「ちくしょう、ちくしょうちくしょう・・・ちくしょう!」
笑いを誘うほどちくしょうを連呼してた。
誰かが笑うまでと決めてたのかは分からない。
O「ここぞとばかりね」
ちくしょうに相槌を入れるO。
また笑い袋になにか言われたのか知らないけど、
少ししか席を外してないのに展開が早い。
今度は笑い袋が事務所からこっちの部屋に戻って来た。NOは不在。
笑い「お話中で、目が合ったから頭だけ下げといたけど挨拶出来たかな」
独り言なのか自分本位に話しかけられてるのか。
でも横に立ち止まられてるし、これは話しかけているらしい。
『殿が』という言葉が抜けていると予想して返事をする。
わたし「じゃあダメだ」
笑い「あはははは!」
その笑い方なんか噛み合ってない。
「もう一度会ったらちゃんと挨拶しなよ」という意味のわたしと、
「いしつかさんがジャレて来た!」という意味に取った笑い袋。
なんか噛み合わない。
噛み合わないけど普段が普段だから仕方ない。
わたしは業務に関しない事はほぼ適当に答える様にしている。
笑い袋に対して。
多分、真面目に付き合っちゃいけないタイプ。
他人から何か吸い取って消耗させるタイプ。
関わらないに越した事は無いがそうはいかない。
そんなだからジャレて来たと思われても仕方がない。
笑い袋に見えてる仲良しメーターとわたしの仲良しメーターの誤差が酷いと誰に伝えりゃいいのよ。
もちろん最初は真面目に話してた。
「右に曲がって」を「真っ直ぐ進む」に解釈するから面倒臭くて適当に力を抜く様になった。
まとめると面倒臭いということ。
面倒臭いので、たったこれだけの会話でまた仲良しメーターが上がった笑い袋。
笑い「H〜社の、類〜似を。これこれ。頂きマンモス」
この状態を笑い袋200%と呼んでいる。
笑い袋200%はわたしが借りてた物を回収して行った。
午後。
自動ドアが開いた瞬間、隣のが短距離選手みたいな勢いで突っ走って行ったのが見えた。
天気娘に言うと、あれを現場ではチョロQと呼んでいるらしい。
天気娘「あの短い距離だからこそ走れるんだよ」
隣のは歩く時もだけど床を見ながら歩くから前方に人が現れても気付かない。止まれない。
止まれないから人が開けたドアを当たり前のように自分が1番に通るし、
ぶつかった時は「ああごめんごめん」と言うが相手の顔は見ない。
おそらく過去に金が落ちててその幸運が忘れられずに床を見ながら歩いているんだろう。
わたしがギリギリに家を出ても間に合うもんだから止められなくなってしまっているのと同じように。
まぁ、冗談だけど。
チョロの響きが舐め腐ってる感じで最高だと思ったけど、他の人にはウケなかった。
だから闘牛になった。
「ちくしょう」の件では無いと思うが、
今朝Nと笑い袋でこんなやりとりがあったらしい。
笑い袋が今日のやる予定に挙げてた仕事をやってる様子が無く、
どうしたのかと聞くと「明日やる事にした」と返ってきたらしい。
明日出荷なのにそれで良いのかとNが説得して仕事に向かわせたと。
あいつ訳分からん、と言いながらボスに報告していた。
笑い袋は"納期をずらせば良い"って選択ボタンがかなり大きい。
"頑張る"ボタンの5倍は大きい。
"面倒臭いからやりたくない"からスタートしてアミダを楽しむ間もなく一直線に"納期ずらす"に辿り着く。
誰かが横棒を入れないと"頑張る"に辿り着かない。
そんな感じ。
わたしが考えるに横棒を入れずに放っといたら放っといたで事情を知らない人達、主にパートさんには、
"1人健気に今日出しを頑張ってる笑い袋さん"と映り、
「今日出しなのになんで手伝ってあげないの?」と上司のNOが批難されるんだろうなと。
とても判官贔屓。
でも笑い袋も悲劇のヒロインの顔と反抗期の顔を強かに使い分けてるからそうなるのは当然っちゃ当然。
そうするとNOのやる事なす事悪く捉えてちょっとずつやり辛い環境に出来上がる。
こう言う連鎖を知ってか知らずかNはアミダに横棒を加えて止めていた。
ただただ腹が立って言ったんだろうけど。
ボスへの報告の時に聞こえたけど、
『チョコ違い』の報告書はちゃんと提出されたらしい。
営業の責任にしちゃダメだよと、そこはちゃんと周りが却下したと。