発言の影響力
お昼。
いつも通り天気娘、オタプリと同じテーブルで休憩中。
天気娘とオタプリは仕事中喋りすぎ。と何処からか苦情が出たらしい。
何処からかと言いつつ、犯人は推理する間もなく、
女学生グループのアメリカンさんだとバレていた。
(アメリカンの名前の由来は
ただ留学経験があって英語分かるとかその程度のあだ名。
アルファベット表記には限界があるのでこれからはどんどん呼び名を決めていく。)
パートのKさんと同じく、アメリカンにはそこまで悪いイメージが無い。
もちろんイメージだけど。
相手によって声のトーンが高かったり低かったりで好き嫌いの差がハッキリしている所は見受けられるが、
放っておいても自ら段取りをしてくれるから上司達には頼りにされている。
指示にも応じるし、実務に影響は無いという意味で悪いイメージが無い。
わたしが「アメリカンさん、そんな苦情言うイメージないなぁ」と言ったら、
天気娘「アメリカンさんは結構言う人、苦情言うタイプ。
それでいて『違う部署』の人達を見下しているのが分かりやすい」と。
今回だけでは無く、以前から苦情を言ってはボスに注意してもらう、という事をやっていると言う。
その話を聞いてわたしは、ボスが蒔いた種の芽が出たなーと思った。
それについては最後に説明する。
それよりもこの時、目の前で事件が起きていた。
新人さん(背がすごく高いからノッポさんにしようかな)がボスの元へ行って、
何か喋ったと思ったらホロホロと泣き出してしまった。
わたしは丁度女学生グループの話を天気娘達から聞いている最中だったので、勘だけど無関係では無い気がした。
ノッポさんの様子に気がついてない天気娘達に言うと、事情を知ってるようで教えてくれた。
女学生グループにハブられている令嬢は、
休憩中にノッポさんと2人で、ある社員の愚痴を話していた。
人に迷惑かける事を生き甲斐にしてるのか!?と疑う様な、解雇になってないのが不思議に思うほど相当やばい社員の事だが、
話すと長くなるのでまた今度。名はランボー。
その愚痴をアメリカンさんに聞かれていたらしく、
アメリカンさんはボスに、
「こっちはゆっくり休憩しているのに、実名で愚痴を言わないで欲しい」と苦情を入れたという。
令嬢とノッポさんはお友達のような関係ではなく、
前の職場が同じだったとかその程度らしい。
愚痴を推奨する訳では無いが、
手っ取り早く距離を縮める方法で愚痴を言い合うのは目を瞑ってくれてもいいんじゃ・・・と思った。
迷惑かける事が生き甲斐?の要注意人物の情報共有でもあるのだし。
女学生グループもそうやって絆を深めているじゃないか。
それを今朝、令嬢を呼び止めて注意したボス。
「今まで話せる人がいなくて、お友達が入って嬉しいのはわかるけど、気をつけてね」と。
令嬢は「気をつけます。ごめんなさい」と。
話せる人いない状況作ってるのがボスの部下のアメリカン達なんだけどね。
正義感が沸々と湧く話だが、
わたしは全て事後に知る。
休憩中はわたしの後ろに女学生グループのテーブルがあるから今まで気が付いてなかったのだが、
気にして見ると、わざとテーブルに鞄を置いて令嬢と喋る気はありませんという壁を設置していた。
その上で鞄の持ち主はストレッチでもしてんのかって程、上半身を捻らせて自分の背中でも壁を築いていた。
お前と喋る気ないポーズをやるなら左右平等にやらないと身体歪むと思う。
身体の歪みは、心の歪みです。
わたしの場合は作業中、右側にいる隣の上司から逃げるように後ろ髪が左に向かって跳ね始めていた。
事情を知ったからには、あまり接点も無いわたしが後ろを振り向いて女学生グループをじーっと見つめて監視してるよとアピールしようかなとも考えた。
わたしには年下という力がある。それしか無い。
言い訳は聞かないし、出来るなら自分達で気付いて欲しい。
年下(わたし)にダメ出しされてるぞお前ら、と。
女学生グループはみんな子育て真っ最中のママだから、自分の親もこんな事やらかしてたら嫌だなーと、その子ども達に同情した。
大人社会こそいじめがあるものとは聞いた事あるけどね。
しかし、当の令嬢の方は女学生グループを相手にしていないと令嬢本人が言っていた。
余計な事は止めておいた。
しゃしゃり出そうになりました。
令嬢がそんなだから反撃はされないと思って甘えているのかもしれない。
女学生グループは自立した令嬢に依存している。
令嬢がいなきゃ絆が深まらない。
令嬢が注意を受けたように、
ノッポさんも他の上司経由で注意を受けて、
直接ボスに謝ろうと声をかけたらしい。
「私が悪かったんです。ごめんなさい」を繰り返していた。
これが昼の事件だ。
この事はボスが他の人に事のあらましを説明してるのが聞こえたので知ってる。
ボスは天気娘とオタプリを呼びつけて、
アメリカンさんに言われた通り「仕事中喋りすぎ!」を注意しに行った。
その時に天気娘が「アメリカン達はいじめっ子!」と言ったかは分からないけど、
「注意するのはアメリカン達の方でしょ!!」と言い返したという。
だけど帰って来たボスは
「興奮し始めちゃって何言ってるのか分からないし面倒臭いや!って『ハイハイ!』って戻って来た」と仕事中に笑い話に変えていた。
アメリカンさんの仕事ぶりはボスに頼りにされてるし、
女学生グループのパートさんほとんどがボスの直属の部下って感じの構図だから、
ボス自身が不利になるような話に聞く耳を持つ訳がなかった。
ボスが蒔いた種について。
アメリカンさん達が他部署を見下す原因となった話をする。
ボスはパートさんとのお喋りで(仕事中のお喋りはよくやってる)、
「天気娘やオタプリの部署に異動になったらみんな辞めちゃうよねー。
あそこに行くって事は使えないって事だから」と日頃から言っていた。
ボス自身がかなり低く他部署を見下している。
パートさん達も強く影響を受けていてもおかしくない。
同じように、
ボスがパートさんの前で、ある社員さんの事を「段取りができない」と、文句を言っていた。
その辺りから、アメリカンさん達がその社員さんに対して声のトーンが低くなったり、
その人を頼らず、わざわざボスに質問しに行く姿が目立った。
当人も気がついていて、いつボスから「パートさんがあたしの所に来るのはあなたが頼りないから〜」的な注意が来るかビクビクしている。
ボスはやる事はやってる人。
他部署の手伝いも進んでやって機械操作を覚えたりして知識も豊富。
一目置かれている。
その為に影響力は絶大。
それを利用できるアメリカンさん達は万能感を感じているに違いない。
怖いですねえ〜。